就職が決まる前に、大分に引っ越した。20代単身の地方移住で最初に考えたこと。

就職が決まる前に、大分に引っ越した。20代単身の地方移住で最初に考えたこと。|LUCID LOG

移住日記 EP.01 移住前夜シリーズ

就職が決まる前に、大分に引っ越した。
20代単身の地方移住で最初に考えたこと。

知り合いゼロ、仕事なし、貯金は心許ない。
それでも大分に行くと決めた。マジで行く。

EP.01からEP.12まで、俺はずっと労働の話を書いてきた。
マニュアルのない職場、給与の遅延、9時間の拘束、汚い端末、14時の絶望、許されている空気。
全部、ある土地での出来事だった。

この記事は、その土地を離れることを決めた話だ。
まだ就職は決まっていない。それでも、引っ越すことにした。

0人
移住先の知り合い
0社
決まっている就職先
25歳
動くなら今しかない
01

なぜ、出たかったのか

派遣先の売り場に立つ。「いらっしゃいませ」を言う。
14時に絶望する。締め作業をする。帰る。寝る。また行く。
それが毎日続いて、毎週続いて、気がつけば数ヶ月が経っていた。

友達が、いなかった。

未練がましく心の中をかっぽじって、本音をぶつけられる相手がいない。
誰とでもそれなりに話せるけど、それなりにしか話せない。
全員との間にATフィールドが張られているような感覚がずっとあった。

一時期、合成音声を使った動画チャンネルをやっていた。
自分なりに手間をかけて作った。
でもチャンネル登録者は50人にも届かなかった。
こんなにいかないものなのか、と思った。
あの方向はもう諦めるしかない。少なくとも、今の自分には合っていなかった。

でも、発信すること自体を諦めたわけじゃない。

いつかは地域に根ざした発信をしたいと思っている。
文章で、映像で、何かの形で、自分が関わる土地のことを伝える仕事がしたい。

そのためには、親がいて、親戚がいて、過去の自分を知っている人間がいるこの土地にいたままでは始まらない気がした。

新しい場所で、何かをやりたかった。

この章の結論

同じことの繰り返し。友達はいない。発信は伸びない。
でも発信を諦めたわけじゃない。だから、土地を変えることにした。

02

知り合いがゼロの土地に行きたかった

「人間関係をリセットしたかった」とよく言うけど、
正確に言えば、俺の場合はすでにリセットされていた。

友達はいない。職場の人間関係は派遣が終われば消える。
恋人もいない。
リセットすべき人間関係が、そもそもほとんど存在していなかった。

じゃあ何をリセットしたかったのか。

親だ。親戚だ。
「あの子は今何してるの」という目だ。

家族が嫌いなわけじゃない。
でも、近くにいると甘えるし、甘えている自分に苛立つ。
心配されることが、ありがたいのに重い。
そういう距離感を物理的に断ち切りたかった。

総務省調査──移住を決めた理由

3位「都会の喧騒を離れて静かなところで暮らしたい」27.3%。
俺もそこに当てはまる。ただし俺の場合、離れたかったのは喧騒というよりも、自分を知っている人間の存在そのものだった。

誰にも知られていない土地に立ちたかった。
それだけだ。

この章の結論

友人関係はもともとない。リセットしたかったのは、親と親戚と「知られている」という感覚だった。

03

なぜ九州だったのか

どちらにも憧れがあった。
自分が足を踏み入れたことのない土地には、まだ自分が知らない空気がある。
そう思うだけで少し救われる気がした。

九州に決めた理由は、いくつかある。

まず、麦焼酎。
親が好きだった。食卓に当たり前にあったあの匂いが、なぜか九州とつながっていた。
大分は麦焼酎の本場だ。親の影響かもしれない。
自分でも気づかないうちに、九州の空気を吸っていたのかもしれない。

それから、宇佐八幡宮。
大学の頃、神社巡りをしていた時期がある。
御朱印を集めるとか、そういうことではなくて、神仏習合の歴史に興味があった。
宇佐八幡宮はその起源とも呼ばれる場所で、いつか行きたいとずっと思っていた。

あとはもっと些細なことだ。
深夜に歩き回る癖がある。
ファミレスがまだ24時間やっている地域が九州には多くて、それだけで少し安心した。

それから——大分の空気を伝えるコンテンツに、ある時期からよく触れていた。
誰が作っていたかは書かないけど、その土地の温度みたいなものが画面越しに伝わってきて、
「ここ、合いそうだな」と思った。
理屈じゃない。感覚だった。

九州には俺を引っ張る何かが複数あった。
東北にはそれがまだなかった。
それだけの差だった。

この章の結論

麦焼酎、宇佐八幡宮、深夜のファミレス、画面越しの空気感。
全部が論理じゃない。でも全部が九州を指していた。

04

福岡でも熊本でもなく、大分だった理由

「九州に住むなら福岡でしょ」と言われたら、たぶん黙る。

福岡は都会すぎる。
天神も博多も、東京のミニチュア版みたいに感じてしまう。
それなら出る意味がない。
熊本もやや大きい。住みやすいとは思うけど、俺が求めていたのはもっとふわっとした感覚だった。

正直に言う。
「ちょうどいい規模感の地方都市」なんて、日本中にいくらでもある。
愛媛も香川も岡山も、金沢も新潟も富山も、全部「ちょうどいい」だ。
だからそこは決め手にならない。

じゃあ何が決め手だったのか。

去年、旅行で大分に行った。

正直、印象はふわっとしている。
これといった衝撃があったわけじゃない。
ただ、「静岡を一段落としたような感じだな」と思った。
俺は静岡に住んでいたことがあるから、地方の空気感は知っている。
大分はそれをもう少しゆるくしたような、どこか力の抜けた土地だった。

方言が好きだった。
「しちょる」とか、そういう言い回しがシンプルに好きだ。
柔らかくて、でもどこか芯がある。
あの響きを日常的に聞く生活がしたいと思った。

大分は温泉県とも言われる。別府にも行った。
ただ、温泉に入ってはいない。

一時期は温泉が好きだった。
草津が一番いいと聞いて行ったこともある。
でも旅行を繰り返すうちに、温泉そのものより温泉街の雰囲気のほうが好きだと気づいた。
湯気と看板と狭い路地。あの空気は好きだ。
でも実際に湯に浸かることには、もうそこまで執着がない。

価値観は変わる。
移住先を選ぶ理由だって、変わっていい。

大分県の移住支援──データ
支援金
単身で最大60万円
県外からの移住者が対象。条件を満たせば支給される。
移住人気
九州で福岡・長崎に次ぐ人気
豊後高田市は「住みたい田舎ランキング」10年連続ベスト3。
特徴
温泉、自然、家賃の安さ
温暖な気候。リモートワーク普及で移住希望者が増加中。

データ上の「良い理由」はいくらでも並べられる。
でも俺が大分を選んだのは、そういう合理的な理由の手前にある、
旅行で感じた「ここ、なんかいいな」という感覚だった。

この章の結論

静岡を一段落としたゆるさ。「しちょる」の響き。温泉街の空気。
全部ふわっとしている。でも、そのふわっとした感覚で人は動く。

05

就職が決まっていないのに移住するということ

普通は就職が決まってから引っ越す。
でも考えてみてほしい。

住みたい県がある。その県の企業に就職したい。
でも面接は二次、三次と進めば現地に行くことになる。
交通費は出るかもしれないし、出ないかもしれない。
受かればいいけど、落ちたらまた別の企業に応募して、また現地に行く。
就活が苦手な人間にとって、それは途方もなく遠回りだ。

だったら先に住んだほうが早い。

憧れ続けるのをやめる。
「いつか行きたい」を「もう来た」に変える。
それだけのことだ。

「いつでも行ける」は、一生行かないと同義だ。

貯金は毎月減っている。
固定費の高い場所に留まり続ければ、いずれ動く体力すらなくなる。
動けるうちに動く。失敗しても取り返せる年齢のうちに動く。
今年で25歳。30歳で動くのと25歳で動くのでは、リカバリーの幅が全然違う。

だから、今だった。

家賃も調べた。
大学時代に住んでいたアパートが月4万円だった。
大分の少し外れなら、同じような部屋が3万円台で借りられる。
固定費が下がれば、収入が不安定でも生きていける期間が延びる。
それは計算だ。

まだ本格的な引っ越しはしていない。
まずは大分のウィークリーマンションに入ることにした。
いきなり賃貸契約を結ぶのではなく、数週間そこで暮らしてみる。
土地の空気を確かめる。それから決める。

フリーランスとしてやっていく意志はある。
でも意志だけでは食えない。それも分かっている。

最悪の場合、ウーバーイーツがある。
配達はできる。体は動く。俺は働ける。
ただ、それが長く続かないだけだ。
だからこそ、時間を切り売りする労働ではない稼ぎ方を、大分で見つけなければならない。

この章の結論

25歳。貯金は減り続けている。「いつでも行ける」は一生行かない。
先に住む。空気を確かめる。仕事はそこから探す。順番を逆にした。

06

移住前夜

親に、大分に行くとの報告は済んだ。。
もう完璧だ。
挑戦するからには頑張りよと浅いコメント。

おばあちゃんはやはり反対した。

だからこのブログの記事を見せようかと思っている。
EP.01からここまで書いてきた記事を。
俺はここまで書ける人間になった。
あの頃の、ただフラフラしていた自分とは違う。
パソコンに向かって文字をタイピングしているときの目は真剣だ。
それだけは自信がある。

まがりなりにも一人暮らしをしていた時期はあった。
でも、親と大きく離れて住むのは初めてだ。
今年で25歳になる。いずれは経験することだった。
それが少し早く来ただけだ。

怖いかと聞かれたら、怖い。

でも、どうせ死ぬ。

これは投げやりで言っているんじゃない。本当にそう思っている。
いつ誰の仕事がAIに本格的に奪われるか分からない。
その波はもうすぐそこまで来ている気がする。
そんな時代に、ここ一年二年の立ち振る舞いが人生を分けると思っている。

なるべく早いうちにAIを使いこなせるようになること。
そのためには、時間を切り売りする労働では駄目で、時間が確保できる環境が必要だ。
その合間にお金を稼ぎ、終わっていく旧式の仕事生活から抜け出す。

そして俺が残してきた発信を、老後の楽しみと、誰かに影響を与えるものにするために、
言葉を磨き続ける。新しい表現方法を身につける。

一昨日、永野がテレビで言っていた。

「満員電車に乗っている人の目には虎が宿る」

しびれた。

あの表現を聞いた瞬間、自分の目にも何かが宿った気がした。

俺はいま、虎の目をして大分に行く。

知り合いはゼロ。仕事はない。貯金は心許ない。
でも、パソコンと言葉がある。

この章の結論

おばあちゃんは反対するだろう。親にもまだ言えていない。
でも、虎の目をした25歳は、もう止まらない。

CONCLUSION

移住前夜の、3つの事実

1

大分を選んだ理由は、ほぼ感覚だった

旅行で感じた「ここ、なんかいいな」。方言の響き。温泉街の空気。
論理的な理由はあとから並べただけだ。

2

「いつでも行ける」は一生行かない

25歳。貯金は減っている。動けるうちに動く。
順番を逆にした。先に住む。仕事はあとから探す。

3

パソコンと言葉がある

知り合いゼロ、仕事なし、貯金は心許ない。
でもこうやって書いている。それだけが、今の武器だ。

今の自分のスタンス

大分に行く。マジで行く。
まずはウィークリーマンションに入って、土地の空気を確かめる。
移住前夜の様子は、また随時ここに書いていく。

労働記録は労働記録として続ける。
でもここからは、移住日記も始まる。
両方書く。力入れるよ。

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