クラウドワークスのポートフォリオを見て息が苦しくなった。特技ゼロの24歳が、LP制作を二日間考えて、やらないことを選んだ話。

LUCIDLOG — Webマーケ修行

クラウドワークスの
ポートフォリオを見て
息が苦しくなった。
特技ゼロの24歳が、LP制作を
二日間考えて、
やらないことを選んだ話。

Webマーケティング講座でLP制作を勧められた。AIを使えばハードルは下がると。構成案は作れた。でもクラウドワークスでプロのポートフォリオを見た瞬間、息ができなくなった。二日間考えて、やらないことを選んだ。その記録。

SECTION 01 LP制作を勧められた日

ネットビジネスで稼ぎたかった。

理由は単純で、金がないからだ。
移住の準備が始まっている。貯金は減り続けている。
何でもいいから、パソコン一台で、自分の手で稼げるものが欲しかった。

特技はない。資格もない。美大なんて行っていない。
体験だけはしてきた。
万引きGメン、携帯販売員、派遣の面接で「彼女いる?」と聞かれて落ちた日。
全部このブログに書いてきた。

でも体験はスキルにならなかった。
ポートフォリオに載せられるものが、ひとつもない。
「あなたは何ができますか?」と聞かれて、
万引きGメンの棚どりの話をするわけにはいかない。

そんな中で、LP制作という選択肢が出てきた。

LP(ランディングページ)とは 商品やサービスを1ページで訴求して、問い合わせや購入に誘導するWebページ。企業が広告の着地先として使う。制作費の相場は1本5万〜100万円。初心者向け副業として紹介されることが多い。

Webマーケティング講座の中で、LP制作が課題に出た。
「まねしやすくて稼ぎやすい」。そう言われた。
AIを使えば構成もコピーも自動生成できる。ノーコードツールで実装もできる。
初心者でも月5〜10万円は狙えると。

聞いた時は、正直、少しだけ希望が見えた。
5万円。あの万引きGメンで消えた金額と同じだ。
取り返せるかもしれない、と思った。


SECTION 02 構成案は作れた。その先で止まった

講座の課題として、LPの構成案を作った。

BEAFフレームワークというものを使った。
Benefit、Evidence、Advantage、Feature。
読み手の心理をこの順番で動かしていく型だ。

ペルソナを設計した。34歳の総務担当。慎重派で、ミスを恐れる性格。
キャッチコピーを5案作った。CTAの文言を3案作った。
ファーストビュー、問題提起、ベネフィット、実績、オファー、クロージング。
テンプレートに沿って、7つのセクションを全部埋めた。

ChatGPTに商品情報を入れたら、構成案が出力された。
キャッチコピーも5パターン出てきた。
「口コミで選べて、買った後も相談できる。それだけで発注が変わる。」
悪くないと思った。

テンプレートを埋めるところまでは、できた。
問題は、その先だった。

構成案は設計図であって、建物じゃない。
設計図を書いた後に、実際にページをデザインして、形にする工程がある。
色を選び、フォントを選び、余白を決め、画像を配置する。

その工程に入った瞬間、手が止まった。


SECTION 03 クラウドワークスのポートフォリオを見て、
息が苦しくなった

構成案ができたから、次は実際のLPを見ようと思った。

クラウドワークスを開いた。
LP制作のカテゴリ。
フリーランスのプロフィールページに、ポートフォリオが並んでいる。

最初に目に入ったのは、化粧品のLPだった。

笑顔の女性モデル。肌が光っている。
背景はピンクとベージュのグラデーション。
キャッチコピーは短くて、でも的確で、一語も余らない。
CTAボタンの色が、周囲の配色と絶妙にコントラストを持っている。

スクロールした。次のポートフォリオ。
また笑顔の女性。今度はパーソナルジムのLP。
Before/Afterの写真。見出しのフォント選び。セクション間の余白。
全部が「わかっている人」の仕事だった。

もう一つ。もう一つ。もう一つ。

美容系。健康食品。ブライダル。エステ。脱毛。
どれを開いても、笑顔の女性がいた。
美しいモデルが、画面の向こうからこちらを見ていた。

その女性を使って、
ターゲットのペルソナに刺さるように設計された、
こまやかな配色選択とメッセージ。
フォントの太さ一つ、角丸の半径一つに意図がある。
それが直感的にわかった。
わかったから、余計にきつかった。

あぁ、なんでだろう。

そう思った瞬間に、BADモードに入った。

文字を打っている時も涙が出てくる。
自分が何を見ているのかわからなくなった。

ポートフォリオの画面が、
自分と「あちら側」の距離を測る定規に見えた。
測らなくていいのに、勝手に測ってしまう。
測るたびに、数字が大きくなる。

ブラウザを閉じた。
閉じた後も、笑顔の女性たちの残像がしばらく消えなかった。


SECTION 04 美術の通知表は、冗談ぬきで2だった

美大を出て、制作会社で経験を積んで、フリーランスで月収100万円。
そういうプロフィールを、SNSでもクラウドソーシングでもよく見かける。

全部が嘘だとは思わない。
むしろ本当のやつが多いんだろう。
デザインを学問として学び、現場で何年も叩き上げた人間が、
LPを1本15万円で受注している。
その人たちのポートフォリオに並んでいる笑顔の女性たちは、
積み上げてきた技術の証明だ。

俺の美術の通知表は2だった。

2 5段階評価の2。冗談ぬきの2。

色彩感覚。構図。レイアウト。タイポグラフィ。
全部、講座の中で言葉としては聞いた。
「ベースカラー70%、メインカラー25%、アクセントカラー5%」。
「BtoBは青系で信頼感を」。「CTAボタンは補色で目立たせる」。

知識としては入った。
でも「知っている」と「できる」の間には崖がある。
覗き込んだら、底が見えなかった。

Canvaを開いた。テンプレートを選んだ。文字を入れ替えた。色を変えた。
出来上がったものを見た。

なんか違う。

何が違うのかすらわからない。
プロのLPと自分のLPを並べた時に、「違う」ということだけがわかる。
でも何をどうすれば「違わなくなる」のかがわからない。

色を変えてみる。フォントを変えてみる。余白を広げてみる。狭めてみる。
どれをやっても「なんか違う」が消えない。
「なんか違う」の正体がわからないまま、画面の前で固まっている。

「できない」ならまだいい。練習すればいい。
「何がわからないのかがわからない」は、練習のしようがない。
これが一番きつかった。


SECTION 05 二日間、考えた。やるか、やらないか

LP制作を副業にするかどうか。

丸二日間、考えた。
ベッドの中で天井を見ながら考えた。
コンビニに行く途中、信号待ちで考えた。
風呂の中で湯船に沈みながら考えた。
スマホでクラウドワークスの案件一覧を開いては閉じ、開いては閉じた。

やる側の理屈は全部わかっていた。

LP制作を副業にする場合の一般論 最初は下手でいい。数をこなせば上がる。クラウドワークスで1〜3万円の案件から始める。ポートフォリオは架空案件でもいい。3本作れば提案できる。AIがあるから制作スピードは出る。デザインはCanvaのテンプレートでカバーできる。半年続ければ月10万円も現実的。

全部、頭ではわかっていた。
ネットの記事にも講座の資料にもそう書いてあった。
「最初は下手でいいんです」。
「完璧を求めなくていいんです」。
「まずは1本作ってみましょう」。

でも——

クラウドワークスの画面を思い出すと、指が動かない。
あの笑顔の女性たちが、まぶたの裏にいる。
あの繊細な配色が、自分のCanvaの画面と重なる。
重なった瞬間に、差だけが見える。

「最初は下手でいい」。
その言葉の意味はわかる。
でも、下手なものを人に売る、という行為のハードルが、
想像していたよりずっと高かった。

二日間考えて出た結論は——

やらない。

SECTION 06 「やらない」を選んだ理由。
逃げたんじゃない。たぶん

やらないことを選んだ理由は、デザインができないからだけじゃない。

LPは作って納品したら、他人のものになる

クラウドワークスで受注して、3万円もらって、納品して、終わり。
そのLPは発注元の企業のサーバーに載る。
俺の名前はどこにも残らない。
次の案件を取るために、また提案文を書いて、
また競合のポートフォリオと比較されて、
また選ばれるかどうかを祈って待つ。

それは、俺が欲しいものじゃなかった。

俺が欲しかったのは、自分の目に見える資産だった。

自分のドメインに、自分の名前で、自分の言葉が積み上がっていくもの。
誰かに納品するんじゃなくて、自分の場所に残るもの。
1年後に読み返した時に、「あの時こう考えていたのか」とわかるもの。
3年後にPVが来ているかもしれないもの。来ていないかもしれないもの。
でも少なくとも、サーバー代を払い続ける限り、消えないもの。

LP制作の3万円は、振り込まれた瞬間に終わる。
次の月にはまたゼロから提案を書き始める。

ブログの記事は、公開した瞬間から積み上がり始める。
1本が資産になるかどうかはわからない。
でも50本、100本と書いていけば、「場所」ができる。
その場所は、俺のものだ。

逃げたんじゃないと思いたい。
選んだんだと思いたい。
でも正直に言えば、半分は逃げだったかもしれない。
逃げと選択の境界線は、後からしか見えない。


SECTION 07 LPは訴求の道具だ。
俺の悔しさを載せる場所じゃない

LPを勉強していて、ひとつだけはっきりわかったことがある。

LPは訴求のための道具だ。
商品を売るために設計された、目的のあるページだ。
構成もコピーもデザインも、全部「コンバージョン」——
つまり問い合わせや購入というゴールに向かって最適化される。

自分がいかに不幸か。いかに悔しいか。いかにどうしようもないか。
そういうことを載せるものじゃない。
そういうLPは見たことがない。
それは正しい。LPはそういうものじゃないから。

でもブログは違う。

ブログには何でも書ける。
悔しさも、虚無も、涙も、BADモードも。
クラウドワークスのポートフォリオを見て息が苦しくなったことも。
美術が2だったことも。
それを書いたところで誰にも怒られない。

そして、書いたものは自分のドメインに残る。

LP制作は「稼ぎやすい」と言われた。
SEOは「時間がかかる」と言われた。
SNS運用は「毎日投稿が必要」と言われた。
動画編集は「センスがいる」と言われた。

どれも正しいんだろう。

でも、ブログだけは、頭の中の思考をそのまま文字にできる。
直感的に書ける。
「こういう構成で」「このキーワードを入れて」「ペルソナはこうで」——
そういう設計をする前に、指が動く。
悔しい時に悔しいと打てる。
涙が出ている時にそのまま打てる。

この手軽さだけが、今の俺に残っている。


SECTION 08 5万円をただ働きにされた直後に、
大分に行く

前の記事に書いた。

万引きGメンの業務委託を辞めたら、退職面談で1時間詰められて、
5万円近くがただ働きになった。
損害賠償をちらつかされて、報酬の交渉を諦めた。
手元に残ったのは1万1,000円だけだった。

その直後に、大分に移住する。

正気でいられるかって。

片っ端からお金を得られそうなものを探した。
LP制作は二日間考えてやらないことを選んだ。
SEOは成果が出るまで半年かかると書いてある。
SNSはフォロワーゼロから積み上げる体力が残っていない。
動画編集はセンス以前にソフトの使い方がわからない。

ないんだよね。

ブログも正直、挫折しかけている。
前の記事を書いた後、書く気力は減った。
いや、通常モードに戻ったと言った方が正確かもしれない。

万引きGメンの5万円の件で怒りのエネルギーがあった時は書けた。
怒りは燃料になる。指が止まらなくなる。
でも怒りが引いたら、通常モードに戻る。
通常モードの俺は、そんなに筆が速くない。

それでも、これだけは言える。

特技がない。美術は2。デザインセンスはない。コーディングはできない。
ポートフォリオに載せるものがない。

でも、文字は打てる。
打った文字は、lucid-log.comに残る。
誰にも納品しない。自分のドメインに、自分の記録として積み上がる。

それが資産になるかどうかは、まだわからない。
1年後にPVが来ているかもわからない。
でも少なくとも、消えない。

クラウドワークスに納品したLPは、契約が終われば俺とは無関係になる。
でもこのブログは、サーバー代を払い続ける限り、ここにある。


SECTION 09 くすぶっている人へ

ここまで読んでくれた人がいるなら、たぶん同じ状態だと思う。

ネットビジネスを始めたい。副業で稼ぎたい。でも何もできない。
特技がない。スキルがない。デザインセンスがない。
クラウドワークスを開いたら、プロのポートフォリオに圧倒されて閉じた。
「初心者でも月5万円」という記事を読んで、やってみようと思ったけど、手が動かない。

LP制作。Webデザイン。動画編集。SNS運用。プログラミング。
どれを調べても、「最初は下手でいい」と書いてある。
でもその「下手でいい」のスタートラインにすら立てない気がする。

何かやろうとして、調べて、調べれば調べるほど自分との距離が見えて、
結局また布団に戻る。

冷や水を浴びせられているような感覚。
誰に浴びせられているわけでもない。
自分で自分に浴びせている。
それが一番きつい。

悔しいよな。

俺もまだここにいる。

LP制作をやらないことを選んで、ブログだけ書いている。
それが正解かどうかはわからない。
たぶん、LP制作をやった方が短期的には稼げた。
でも俺は、自分の目に見える資産が欲しかった。

このブログが資産になるかどうかは、まだわからない。
でも書いている。
書くことだけは、できるから。

いつかLPもやるかもしれない。
デザインを勉強して、Canvaじゃなくて Figmaを触って、
美術2の人間なりに作れるようになるかもしれない。
そうなった時は、またここに書く。

今は、書くことだけが残っている。

それだけだ。

DATA — EP.23
記事テーマLP制作を二日間検討し、やらないことを選んだ記録
きっかけWebマーケティング講座でLP構成案を作成
断念の主因デザインスキルの壁 +「他人の資産」を作ることへの違和感
美術の通知表2(5段階)
クラウドワークスポートフォリオ閲覧 → 化粧品LP等のクオリティに圧倒される
BADモードの引き金笑顔の女性モデル、繊細な配色、プロとの距離
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直前の出来事万引きGメン退職で5万円近くただ働き(前記事
直後の予定大分へ移住
ブログ継続状態気力低下中。怒りのエネルギーが切れて「通常モード」に戻った
読者への言葉悔しいよな。俺もまだここにいる。

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