万引きGメン(業務委託)を辞めたら
5万円近くただ働きした。
退職面談で「損害賠償」を
脅しに使われた記録
業務委託を辞めようとしたら、退職面談で約1時間詰められ、5万円近くをただ働きにされた実話。会話の記録と、後から気づいたことを書く。
PROLOGUE 5万円近く、消えた
終わった後、しばらく何も感じなかった。
怒りでも悔しさでもなく、ただ、虚無だった。
建物を出て、駅に向かいながら、
自分がいくらぶん働いて、今日いくら取られたのかを、
頭の中でぼんやり計算していた。
万引きGメン(業務委託)として働いていた。
移住を決めて、辞めることにした。
辞め方は最悪だった。
シフト提出をさぼって、催促が来て、「辞めます」と返信した。それだけだ。
その後、退職面談という名の呼び出しがあった。
録音していた。
そこで起きたことを、ここに全部書く。
BACKGROUND 万引きGメンの業務委託とは
仕事の内容は、商業施設や金融機関に「万引きGメン(保安員)」として入る仕事だった。
具体的な会社名や勤務地は、ここでは伏せる。
業務の流れはシンプルだった。
採用の時、担当者から口頭でこう説明された。
「週1回以上は出れること。
毎月24日までに翌月のシフト希望を出すこと。
上番・下番メールは必須。
日報は期限を守ること」
これが後で、すごく効いてくる。
業務委託とアルバイトの決定的な違い
働き始めた当初、正直あまり意識していなかった。
でも後から調べて知った。
アルバイトは「雇用契約」だから、未払いがあれば労働基準監督署に相談できる。
業務委託はそれができない。
「雇用」じゃなく「個人事業主」扱いだから、
労働基準法の保護が原則として受けられないのだ。
これが交渉テーブルの力関係を、最初から決めていた。
TIMELINE 辞めるまでの流れ
- 数ヶ月前 万引きGメンの業務委託を開始。週1回以上の勤務、毎月24日のシフト提出が条件。
- 同じ頃 移住を決意。新生活の準備が頭の大半を占めるようになる。仕事のことが後回しになっていく。
- 翌月24日(締め切り) 4月分のシフトを提出しないまま期限を過ぎる。連絡もしなかった。
-
2日後
会社から催促が来る。
「まだ予定が出ていませんがどんな状況ですか」。 - 同日 俺の返信:「もう辞めます」。
- 後日 退職面談(録音した)。これがこの記事の本題。
我ながら、辞め方は最悪だった。
シフトを無視して、催促されてから辞めると言った。それは認める。
ただ——
辞め方の問題と、報酬の問題は別だと思っている。
「最悪な辞め方をした」から「5万円近くを失っていい」にはならない。
その「別の話」が、面談でどう扱われたかを書く。
MAIN 退職面談の記録
担当者を「A」と書く。
名前も会社名も地名も、ここでは伏せる。
面談は約1時間続いた。
俺が「はい」と答え続けているあいだに、
少しずつ、取れるはずのものが消えていった。
開口一番「飛ぶのと一緒」
最初にこう言われた。
「飛ぶ」とは、無断で仕事を放棄して連絡を絶つことだ。
それと同じだ、という位置づけで面談が始まった。
最低な辞め方をした人間、という枠の中に俺を入れてから、
その後の全部の話が積み上がった。
「多めに見てきた」「応援していた」が繰り返される
感情的な恩の話、そして損害賠償の話。
この往復が、長い時間続いた。
「はい」しか言えなかった。
1時間、ずっとそうだった。
反論しかけた場面が、2回あった
一度だけ、「シフトの締め切りは本当に24日が絶対なのか、31日まで変更できるんじゃないか」と言いかけた。
Aさんは一瞬「確かにそうだ」と認めた。
でも次の瞬間には「でもどういう事情があっても24日に連絡するのは最初から決まっていること」と、話が移った。
「書面の契約書をもらっていない」と言いかけた時も、
Aさんは「確かにそうだ」と認めた。
やはりすぐ別の話になった。
どちらも深追いできなかった。
1時間かけて詰められた後の人間に、
論点を追いかけるエネルギーは残っていなかった。
EVIDENCE お金が消えた、ふたつの理由
面談の後半は、報酬の確認に移った。
5万円近くが消えたのは、別々のふたつの理由からだ。
理由① メール容量がいっぱいで、上番メールが送れなかった
2月に2日間、出勤した記憶がある。
その分の報酬を確認しようとしたら、
上番メールの記録が確認できないと言われた。
理由がある。
その時期、俺はメールアドレスを変更していた。
旧アドレスの容量がいっぱいになって、
メールが送れなかったことがあったからだ。
3月からは新しいアドレスに切り替えた。
俺はその日、日報を書いてポストに投函した。
現場の名前も覚えていた。
でも——
これが一番きつかった。
働いたかどうかじゃなくて、
証明できるかどうか、という話になっていた。
メールが送れなかった日の分は、その瞬間に消えた。
理由② 3月分5日間を、損害賠償で断念させられた
もう一方の理由は、3月分だ。
3月は5日間、出勤していた。
その報酬を受け取りたいと言おうとしたら、こう言われた。
報酬を取ろうとすれば損害賠償を請求する、という話だ。
どちらを選んでも損をする構図で、
結局交渉を諦めた。
ふたつの理由が重なって、5万円近くが消えた。
手元に残ったのは、2月分として提示された1万1,000円だけだった。
ANALYSIS 後から気づいた面談の構造
帰り道、ずっと虚無だった。
家に帰って録音を聞き返してから、
ようやく何が起きていたかが少しわかってきた。
① 最初に「最低な立場」に置く
「飛ぶのと一緒」という言葉が冒頭に来たのは、偶然じゃないと思う。
あれで俺は最初から道徳的に劣位に立たされた。
その状態で正当な主張をするのは、心理的にかなり難しい。
「お前はそんな立場じゃない」という空気が、ずっとあった。
② 感情と脅しを交互に使う
「応援していた」「残念だ」という感情的な言葉と、
「損害賠償を検討している」という法的な脅しを、交互に使われた。
片方だけなら対処できたかもしれない。
両方を長時間繰り返されると、どう返せばいいかわからなくなる。
③ 証拠は全部、向こうにあった
メールのログは会社側にある。俺には何もなかった。
上番・下番メールがないなら出勤した証拠にならない、という論理は、
その非対称性を前提にしていた。
日報を出したという事実は、
「でもそれはメールがないと確認できない」で終わった。
④ 指摘を認めて、すぐ別の話にする
俺の反論が通りかけた瞬間に、話題が変わった。
「確かにそうだ」と認めながら、次の話に移る。
会話のテンポが速いから、追いかけられない。
AFTERMATH 悔しくて調べたこと
家に帰って、虚無のまま検索した。
業務委託の未払い、業務委託の退職、損害賠償、上番メール。
全部が後の祭りだったけど、
知らなかったことがたくさんあった。
上番・下番メールは「タイムカード」そのものだった
Aさんが面談で何度もそう言っていた意味が、
帰ってから初めてちゃんとわかった。
会社にとってあのメールは、出勤した事実の唯一の証拠だ。
送れなかった日は、「存在しなかった日」になる。
送れなかったなら、その日のうちに
電話でもLINEでも別の方法で
「送れなかったけど出勤してる」と連絡しなければいけなかった。
それをやっていなかった。
書面がなかったことの意味
「口頭での契約でも有効」と書いてあるサイトをいくつか見た。
でも有効だとしても、
何を口頭で約束したかを後から証明するのが難しい。
書面があれば、少なくとも「何を約束したか」は議論できる。
口頭だけだと「言った言わない」の世界だ。
「書面の契約書をもらっていない」という指摘が
面談で一瞬通りかけたのは、
そこに実際の問題があったからだと思う。
「損害賠償」という言葉について
面談で何度も出てきたから調べた。
業務委託の退職交渉でこの言葉が出ること自体は珍しくないらしい。
実際に請求が来るかどうかは、今のところまだわからない。
ただ、調べてみると
「交渉の脅しとして使われるケースがある」という話も複数見た。
録音は、合法だった
後から調べて知った。
一方の当事者が録音する場合は、日本では問題ないらしい。
面談前にスマホの録音アプリを起動しておくのは、今後必ずやろうと思った。
この面談では偶然録音していたから、記録が残っている。
EPILOGUE 移住前、最後の仕事として
4月から、居住地を離れる。
この仕事が、移住前の最後の労働記録になった。
終わり方は最悪だった。
5万円近くは今のところ取り返せていない。
でも、この経験で決めたことがある。
出勤証明は、自分でも残す。
面談は、録音する。
悔しくて調べた情報が、誰かの役に立てばいい。
それだけだ。
仕事遍歴、まだ続く。