モバイル販売員の派遣はきつい? 2ヶ月で辞めた自分が、 仕事内容・給料・向き不向きを全部書く。
家電量販店のモバイルコーナーに派遣された。24歳。
時給は約1,200円。
月の手取りは約17万5,000円。
体感の拘束は1日約11時間。
研修はほぼなかった。
休憩中、外に出ることもできなかった。
2ヶ月で辞めた。
3ヶ月更新の契約を、更新せずに抜けた。
この記事では、仕事内容、1日の流れ、給料、人間関係、
そして向いている人と向いていない人まで、
自分が見たままを書いていく。
これからこの仕事を考えている人が、
始める前に判断できるように。
この仕事がきついと言われる理由だけではなく、実際に何をやるのか、 常勤スタッフ・特販・イベントスタッフの違いは何か、 そして自分に向いているかどうかまで、判断材料になる形で整理している。
モバイル販売派遣とは何か。
派遣会社に登録して、
家電量販店のモバイルコーナーに配属される。
それがこの仕事の出発点だ。
売り場にはキャリアごとのチームがある。
ドコモ、au、ソフトバンク、楽天。
同じフロアに並んでいても、
空気は同じではない。
派遣元が違えば、上に立つ人間も違う。
朝の雰囲気も、詰められ方も、
教え方も、全部少しずつ違う。
俺が入ったキャリアは、
まだ人間味が残っていた。
会話もあるし、ふざける余白もある。
でも隣のキャリアは、朝から全員がスマホを触っていて、
誰も一言も話さない。
同じ売り場に立っていても、
ほぼ別の会社だった。
配属先の当たり外れは、
自分では選べない。
しかも、入ってみるまで分からない。
だから「モバイル販売派遣はきついか」と聞かれたら、
まず答えはこうなる。
きついかどうかは、配属先でかなり変わる。
ただし、その前提を踏まえても、
きつい要素はちゃんとある。
この記事では、その部分を曖昧にせず書いていく。
勤務条件と、
最初に知っておきたい数字。
まず、これから応募する人が一番気にする数字を先に置いておく。
ここが曖昧なままだと、
読み終わっても判断できないからだ。
- 派遣会社
- 中小の派遣会社。社名は非公開。
- 派遣先
- 駅前の大型家電量販店。
- 時給・手取り
- 時給は約1,200円。月の手取りは約17万5,000円だった。
- シフト
- 変動制。希望は月3日まで。平日2日と土日1日という形だった。
- 契約
- 3ヶ月更新。自分は2ヶ月で更新せずに抜けた。
- 研修
- 座学もOJTもほぼなく、休憩室で研修動画を約6時間見ただけだった。
- 有給
- 最初の3ヶ月はなし。つまり更新前に辞めると使えない。
- 休憩
- 1時間。ただし休憩中でも外に出られない。
シフトの自由度は思っていたより低かった。
希望休は「通ったらラッキー」ぐらいの感覚で、
土日はどちらか出る前提になる。
そして、研修は本当に薄い。
「未経験歓迎」と書かれていても、
入った瞬間から丁寧に育ててもらえると思わない方がいい。
商品知識も、立ち位置も、
誰に何を聞くべきかも、かなり自力で拾うことになる。
その時点で、かなり嫌な予感はしていた。
常勤スタッフ・特販・
イベントスタッフの違い。
ここは曖昧に書かない方がいい。
売り場に入る前は、
このあたりの言葉がごちゃっとして見える。
でも、現場に立つと違いがある。
常勤スタッフ
毎日同じ売り場に立つ側。
自分はこっちだった。
日々の売り場の空気、メンバー、客層を背負う立場で、
イベントのたびに入れ替わるわけではない。
特販
営業寄りの動きが強い。
取るべき数字が前に出やすく、
話し方も押しも、常勤より強めになりやすい。
ノルマから自由ではない。
イベントスタッフ
ティッシュ配りや呼び込みなど、
人を止める側の仕事が濃い。
こちらも数字とは無縁ではなく、
立たせる、座らせる、つなぐという圧がある。
名前が似ているから混ざって語られがちだが、
現場では役割の重心が違う。
常勤は売り場を回す側で、
特販は営業色が強い。
イベントスタッフは、
ティッシュ配りや呼び込みの比重が上がりやすい。
ただし、共通している点もある。
特販もイベントスタッフも、どちらも数字の圧がある。
インカム越しの言い方が違うだけで、
圧そのものは消えない。
「もっと前に出て」「もっと声を出して」
「もっと捕まえて」という空気は、ちゃんとある。
派遣元が違うと、上司同士がそこまで強く干渉し合えないこともある。
そのため、常勤は常勤で固まり、特販は特販で固まり、
イベントスタッフはイベントスタッフでつるむ、という分かれ方が起こりやすい。
1日の流れ。
モバイル販売員の1日は、シフト帯で始まり方が変わる。
ただ、どのシフトでも「売り場に立っている時間」だけが仕事ではない。
出勤してから売り場に立つまで
家を出るのは勤務開始の約1時間前。
店に着いたら荷物チェックがある。
ロッカーの鍵を受け取って着替える。
うちのキャリアには朝礼がなかったから、
着替えたらそのまま売り場に出た。
他のキャリアでは、
従業員通用口の前に集まって朝礼をしていた。
この時点でもう、チームごとの空気の差が出ている。
退勤するとき
外に出る前にも荷物チェックがある。
万引き防止だ。
遅番の場合はその前に、
説明用紙の在庫確認、什器の確認、タブレット台数の確認、
売上数字の突き合わせ、掃除、ゴミ捨てが入る。
ここまでやって、ようやく帰れる。
帰宅後
帰り道、まっさきにイヤホンをつけた。
癒やしというより、
仕事の空気から自分を切り離すためだった。
家に着いたら身体を戻すために寝る。
何かを始める余力は、ほとんど残らない。
勤務8時間、休憩1時間。
通勤、閉店作業、荷物チェックまで含めると、体感拘束は約11時間だった。
新人が実際にやる仕事内容。
最初の2ヶ月で任されること
メインの仕事は、
モバイルアクセサリーコーナーに立っての案内だった。
スマホケース、フィルム、充電器。
そのあたりを見ている客に声をかけ、
質問があれば答える。
機種変更や料金プランの相談に発展したら、先輩に引き継ぐ。
最初の2ヶ月では、契約の取得までは求められなかった。
逆に言えば、深い仕事をやらせてもらえるわけでもない。
コーティングも、すぐには触らせてもらえなかった。
自分の場合は辞める2日前になって、
ようやく見学の機会が来た。
隣に座って客とのやりとりと手順を見ただけで、
それが最初で最後だった。
仕事の3分の1は、
ティッシュ配りだった。
エスカレーターの下に立って、
通りすがりの人にポケットティッシュを配る。
モバイル販売員という肩書きから受ける印象とは、
かなり違う仕事が混ざっている。
新人にとっては、むしろこっちの比率が高い日もある。
声かけの実態
「何かお手伝いさせていただくことはございませんか?」
この一言を何度も繰り返す。
先輩が見ていた日に数えたら、32回だった。
普段はそこまでではないにせよ、
一日中ずっと似たような声を出し続けることになる。
やる前は、
あんな定型文で客が止まるはずがないと思っていた。
でもやってみると違った。
言葉を変えれば何とかなるわけではない。
声のトーン、感じの良さ、
そして最初から反応する気のある客を拾うこと。
実態は、そういう仕事だった。
声出しは、乗る客と乗らない客をふるいにかける作業だった。
きれいな営業術というより、かなり地味な選別に近い。
トランシーバーの使われ方
左耳にイヤホンをつけて、
売り場のやりとりをずっと聞く。
「誰か空いてる?」「この人お願いします」
「ダブルチェックお願いします」
そういう声が絶えず流れている。
新人の自分に向けられるのは、
休憩の指示、ゴミ捨て、レジ誘導が多かった。
何でもやらされるというより、
何も深くはやらせてもらえない。
その半端さがきつかった。
立っている時間の長さと、任されなさの長さが重なることだ。
時間帯で変わる客層。
どんな客が来るのかも、
これから働く人にとっては気になるはずだ。
駅前の大型店で2ヶ月立った体感を、
時間帯ごとに言葉で置いておく。
- 開店から11時半ごろまで
- ほぼ誰もいない。常連の老人と、たまにカメラを見に来る人がいるくらい。
- 昼前後
- 昼休みのサラリーマンやOLが通るが、モバイルコーナーで立ち止まる人はそこまで多くない。
- 午後
- 若めの層が増える。ただ、買う目的がはっきりしている人ばかりではない。
- 夕方から夜
- 高校生の集団や、仕事帰りの疲れたサラリーマンが混ざる。夜の方が空気は少し荒い。
全体を通して感じたのは、
思っていたより年齢層が高いということだった。
老人は閉店間際以外、ほぼ常にいる。
そこそこ都会の駅前でこの客入りなら、
郊外店舗はもっと静かだろうと思う。
休憩室という密室。
休憩中、外に出られない。
この説明は、事前にはなかった。
一度従業員口から中に入ると、
よほどの事情がない限り外には出られない。
コンビニに行くことも、
外の空気を吸うこともできない。
それを知ったのは、働き始めてからだった。
休憩室は建物の上階にあった。
白い蛍光灯、文字だらけの掲示物、
3人掛けの白い長方形テーブル。
昼のピークには、そこに50人近くが詰め込まれる。
カップラーメンの油っぽいにおい。
タバコのにおい。
トイレの下水と芳香剤が混ざった空気。
トイレは食事スペースから振り返れば見える距離にある。
あの部屋の記憶だけは、辞めたあともかなり残った。
初日からご飯を食べなかった
初日に「マスクをつけていた方がいいと思います」と言われた。
身だしなみの指摘だったのだと思う。
もともとマスクの下を見られるのが好きではなかったし、
あの空間で食事をする気にもなれなかった。
だから毎日、テーブルにうつ伏せになって、
イヤホンをつけて、目を閉じた。
それだけが、あの部屋で自分を守る方法だった。
先輩と話が途切れた日
一個下の先輩と、住んでいる地域が同じだった。
それで少しだけ地元の話をした。
でも翌日には、もう話すことがなかった。
一緒に座ったものの、間がもたない。
俺がうつ伏せで寝ているふりをしたら、
その先輩は次の日から別の席に座るようになった。
察したのだと思う。
ただ不便というだけではない。
気分を切り替える逃げ道が、最初から一つ消えているということだ。
人間関係と売り場の空気。
派遣はかなり多かった
俺がいた店舗では、
モバイル販売の派遣が30人近くいた。
おそらく多い方だと思う。
キャリアごとにチームが分かれていて、
同じキャリアの中ではそこそこ会話もあった。
ただ、それは自分のキャリアの話だ。
他のキャリアでは、
まったく空気が違うこともある。
朝から静まり返っているチームもあるし、
身内ノリが強いチームもある。
だから「携帯販売の人間関係」を一言でまとめるのは難しい。
家電量販店の正社員とはほぼ関わらない
暗黙のルールがあった。
家電量販店の正社員に、
こっちから気軽に聞きに行ってはいけない。
邪魔をしてはいけない。
上の人間が店の屋号に気を使っているから、
下も当然そう動くことになる。
困ったことがあっても、
誰に聞いていいか分からないまま時間が過ぎる。
助けを求める先が最初から少ない。
印象に残っている人
接客のプロみたいな人がいた。
おでこを出してワックスで髪を固め、
いい眼鏡をかけていて、笑顔がうまい。
初めて見たとき、
こんな人いたのかと思った。
結構気にかけてくれた。
名前を呼ばれた回数は、一番多かったかもしれない。
でも最終日だけ、その人は挨拶をしてこなかった。
それだけが、今でも少し気になっている。
男はほっとかれる
この職場では、
男というだけで半ばほっとかれる感覚があった。
自分から挨拶しなければ、
そのまま透明人間みたいに一日が終わる。
誰かが手を引いて教えてくれるわけではない。
自分から動く、聞く、顔を覚えてもらう。
それができないと、特に最初はかなりきつい。
給料・交通費・待遇のリアル。
- 時給
- 約1,200円。飛び抜けて高いわけではないが、派遣としては普通。
- 月の手取り
- 約17万5,000円。2ヶ月の総収入は約33万円だった。
- 交通費
- 定期代は出る。ただし申請の導線が毎回ぶれていて、かなり面倒だった。
- 有給
- 最初の3ヶ月はなし。更新前に辞めた自分には、使える有給が一日もなかった。
交通費は出る。
ただし、出し方が煩雑だった。
あるときは派遣元のLINEグループに貼られたリンク、
あるときは給与管理アプリ、
また別のときはメンターとのLINEグループ。
どこから申請するのかが統一されていない。
給料だけ見れば「まあ普通」で済む。
でもこの仕事は、
給料だけで耐えられるか決まるわけではない。
ティッシュ配り、休憩室、研修の薄さ、
配属先の当たり外れ。
その全部を含めて見ないと、
割に合うかどうかは判断しづらい。
同じ売り場でも、見えない線がある
派遣先の正社員が「エース」として扱われる瞬間を見たことがある。
同じ売り場に立っていて、同じ制服を着ていても、
その輪には入れない。
その差は大きな事件ではない。
でも、確かに存在していた。
同じ場所に立っていても、
同じ側の人間ではない。
その感覚は、じわじわ効いてくる。
精神的にきつかったこと。
一番きつかったのはティッシュ配り
終わりがない。
同じ姿勢で、同じ声を出し続ける。
少し言い回しを変えようと思っても、
その工夫すら面倒になってくる。
単調さが、じわじわ精神を削っていく。
これが仕事の3分の1を占めていた。
「何が一番きつかったか」と聞かれたら、
迷わずティッシュ配りを挙げる。
身体に症状が出た
足の裏に大きい豆ができた。
立ちっぱなしだから、足がやられるのは想像していた。
でも、ストレスで蕁麻疹が出たのは想定外だった。
身体は思っているより正直だった。
「帰りたい」は毎時間思っていた
毎日。毎時間。
ほぼ常に帰りたいと思いながら売り場に立っていた。
退職して何ヶ月も経った今でも、
あの下水のにおいは記憶に残っている。
それぐらい、身体の近くにあった仕事だった。
嫌な客
基本的には、困った客が来たら他のメンバーに引き継げる立場だった。
でも一度だけ、全員が手を離せないタイミングがあった。
iPhoneケースのピンク色で、
今つけているものと同じものがほしいという客だった。
一緒に探したが見つからない。
「もうないんでしょ? なら裏見てきて」と言われた。
でも俺にはバックヤードに入る権限がない。
店の人に聞いてきます、と伝えたら、
「もういいわ。めんどくさい」と言われた。
その客は、そのまま同じコーナーに残って、
他のキャリアのスタッフに同じことを頼んだ。
その人も「そういうことはできないんですよ」と柔らかく返した。
結果は同じだ。
同じ「できない」なのに、
受け取られ方が違った。
「さっきの人に話しかけたのが間違いだったわ」
そう言われた。
同じ結果でも、態度だけでここまで変わる。
それが一番の衝撃だった。
トイレに行く勇気がなかった
職場に馴染んでいる人なら、勤務中のトイレも案外自由に行っていた。
でも新人の自分には、
「今なら行っていい」という空気を読む余裕がなかった。
腹が痛くなった日は、
上司の目につく位置で声出しをしながら、
そろそろ休憩に行かせてくれと無言でアピールしていた。
向いている人・
向いていない人。
2ヶ月で辞めた人間の意見だ。
成功した側の言葉ではない。
でも、辞めた側だから見えることはある。
笑顔ができる人。
割り切れる人。
自分から挨拶して、自分から質問して、
自分から場に入っていける人。
スマホ知識より先に、立ち振る舞いの方が大事になる。
不満を溜め込みやすい人。
声を出すのが苦手な人。
教えてもらうまで待ってしまう人。
特に男で受け身だと、かなりきついと思う。
この仕事で生き残るのは、
笑顔と割り切りと主体性を持っている人だと思う。
逆に、不満を毎回正面から受け止めてしまう人は、
確実に削られていく。
ちなみに、最初の2ヶ月に限れば、
スマホの知識があるかどうかはそこまで大きくない。
それより先に、
声を出せるか、雰囲気を壊さずに動けるか、
その方が見られている。
働く前に知っておきたかったことと、
総合評価。
働く前に知っておきたかったこと
- 1. 研修は、ないと思った方がいい
- 動画を見て終わり、ということが本当にある。手取り足取り教えてもらえる前提では入らない方がいい。
- 2. 休憩中に外へ出られないことがある
- これは事前説明がないとかなりきつい。知っているのと知らないのとでは覚悟の仕方が違う。
- 3. 出退勤時の荷物チェックがある
- 最初は驚くが、毎日のことになると慣れる。ただ、最初に聞いていないと普通に面食らう。
- 4. 売り場のどこに立つかは自分で選べない
- ケース売り場、フィルム売り場、声出しの位置。配置は上が決める。希望は通らない。
- 5. スキルがすぐ身につくわけではない
- コーティングや契約まわりを早い段階で任されるとは限らない。むしろ見学すら遅いことがある。
総合評価
給料は普通でも、
体力、精神、やりがいの三つがかなり低い。
ティッシュ配りの単調さ、密室の休憩室、
何も教えてもらえない感じ。
この三つに耐えられるかどうかで、
この仕事の印象はかなり変わる。
もう一度やるとしたら
条件がある。
研修をちゃんとしてくれること。
スマホや料金プランについて、体系的に教えてくれること。
パソコンを使う事務寄りの業務も経験させてくれること。
そこまであれば、もう一度やる余地はある。
でも、それってそんなに難しいことなのか。
教える。経験させる。放置しない。
それだけで辞める人はかなり減るはずだ。
まともな人は多かった。
なのに常に人が足りない。
つまり、まともな人ほど辞めていく構造がある。
俺は壊れる前に抜けた。
36点。それが、今でも一番正直な数字だと思っている。
求人サイトを見ると、
また携帯販売の募集が並んでいる。
人間は時間が経つと忘れる。
だからこの記事を書いた。
自分が忘れないために。
そして、これから入る人が、
始める前に少しでも判断できるように。
- 外に出られない休憩室で、うつ伏せで松本人志を聴いていた
- 拘束11時間。外出禁止の休憩室。蛍光灯と下水のにおい。
- 2ヶ月いて、明確にほめられたのは2回だった
- モバイル販売派遣で「認められる瞬間」がどれくらい少ないかを書いた記録。
- 携帯ショップを辞めて大分に移住した
- 辞めたあとに何をしたか、生活ごと動いた記録。
- コールセンターの電話面接を受けた
- 次の仕事を探し始めたときの、別の記録。