コールセンターの電話面接を受けた。嘘は2つ、沈黙は5秒、2月31日は存在しない。

LUCID LOG / 面接記録

コールセンターの
電話面接を受けた。
嘘は2つ、沈黙は5秒、
2月31日は存在しない。

コールセンターの
電話面接を30分受けた。

退職理由を聞かれて5秒黙った。
ひねり出した嘘は
「上司と合わなかった」。
本当は退屈だった。

弱みを聞かれて
「継続力」と正直に答えた。
3ヶ月で前職を辞めた直後に
それを言う意味を、
言い終わってから気づいた。

存在しない日付を1つ言った。
存在しないシフトを1つ答えた。

採用の場合のみ連絡が来る。
来なければ、
この30分は何も残らない。
ただ、この記事が残る。

2026.04 | WRITTEN BY KUNIMOTO | 12 MIN READ | 面接 / コールセンター / 電話面接 / 退職理由 / 嘘 / 弱み / 25歳 / 無職

30面接時間(分)
2嘘の数
5沈黙(秒)
0現在の月収(円)

電話が鳴った。

面接は電話だった。

向こうからかかってくる。
こっちは部屋で待つ。
スーツもいらない。
顔も見えない。
声だけの30分間。

最初に本人確認がある。
名前と生年月日を言う。それだけ。

面接官の第一声を聞いた瞬間、
コールセンターの人だと思った。
丁寧だった。
一言ひとこと、ゆっくり、はっきり。

ただ最初のうちは
ものすごく違和感があった。
心がこもっていない丁寧さ。
テンプレートを
音読しているような声。
後半になるにつれてマシになったけど、
最初の10分は
人間と話している感じがしなかった。

まず採用の場合のみ
連絡するという話。
不採用なら何も来ない。
静かに落ちる仕組み。

まだ住んでいない住所。

引っ越し先の住所を聞かれた。
郵便番号から部屋番号まで全部。

「少々お待ちください」と言って調べた。
まだ住んでいない部屋の住所を
電話口で読み上げるのは
不思議な感覚だった。

説明が長い。

そこからしばらく、
こちらが話す場面はほぼなかった。

守秘義務の話。
社会保険の話。
契約更新の話。
マイナンバーの話。
ダブルワークの条件の話。

全部「はい」で返した。
内容は事前にメールで届いた
資料と同じだった。
読み上げの時間。

仕事の内容も説明された。
コールセンターで
問い合わせに対応する受電の仕事。
パソコンで検索と入力をする。

シフトのパターンがいくつかあり、
組み合わせもできる。
研修は平日14日間、座学とロープレ。
時給は研修中も同じ。

ここまでで体感15分ぐらい。
まだ何も聞かれていない。

研修の中身を聞いてみた。

説明が一段落したあと、
「ご不明な点ございますでしょうか」
と聞かれた。

聞いてみた。
「研修内容をもう少し詳しく
知ることはできますか」

面接官は少し間を置いて、
さっきとほぼ同じ内容を
もう一度言った。
「詳しい内容は今お伝えすることが
できかねます」と続いた。

聞いても出てこない情報だった。
聞かなくてよかったかもしれない。
でも何も質問しないより
マシだったと思いたい。

存在しないシフトを言った。

勤務希望を聞かれた。

週4日。
時間帯を答えようとして、
存在しないシフトパターンを
口にしてしまった。
さっき説明された選択肢の
どれでもない時間を言った。

面接官が聞き返してきた。
こちらが黙ると
「短期希望の場合は
日勤でお願いしています」
とフォローしてくれた。

「はい」と答えた。助かった。

「特にありません」を
連発した。

短期希望の理由を聞かれた。

「特にはありません」

面接官がもう一度掘ってきた。
「何か理由は?」

「特にはないんですけど」

本当はある。
コールセンターは本命じゃない。
将来は事務職を希望していて、
その前段階としてPC操作と
電話対応のトレーニングを
短期で積みたいだけだ。

でもそんなこと言えない。
「御社は練習台です」と
言っているようなものだから。

結果「特にない」を2回続けた。
自分でもまずいと思った。
理由がない人間に聞こえる。
そっけない。
何も考えていないように見える。

でも本当のことを言うよりは
マシだった。たぶん。

KEY INSIGHT

面接には
「本当のことを言えない質問」がある。
言ったら終わる本音を隠すために
「特にない」を選ぶ。
でも「特にない」も印象が悪い。
本音と建前のあいだに
正解の言葉が見つからない。

前職の退職理由──
5秒の沈黙。

前職について聞かれた。
携帯販売を3ヶ月やって辞めたと伝えた。

「差し支えなければ
退職された理由を
伺えますか」

ここで詰まった。

本当の理由は退屈だったからだ。
売り場に立っているだけで、
誰も何も教えてくれない。
ただ立っている時間が長くて、
それが退屈で辞めた。

でもそのまま言ったら
面倒な奴だと思われる。
「教えてもらえなかった」は
言い訳に聞こえるし、
「退屈だった」は論外だ。

5秒くらい黙った。

「退職したのは、あの、
そのちょっとはい。あの、そうです。
厳しめのちょっと上司の方と
合わなくてという感じで
なってしまって」

嘘だ。
上司と合わなかったのは
理由の1割ぐらいで、
退職理由の半分は「退屈」だった。
でも5秒間でひねり出せたのが
これだった。

面接官は
「折り合いが合わずに
ということですね」
とまとめてくれた。
それ以上は掘られなかった。

面接で言った上司と合わなかった
本当のこと退屈だった。立っているだけで誰も何も教えてくれなかった。退職理由の半分はそれ。上司は1割
沈黙約5秒

パソコンは「普通」。

志望理由を聞かれた。

「接客経験が活かせると思ったのと、
パソコンでタイピングするのも
苦手ではないので」

面接官が聞き返してきた。
「得意ではないんですか」

「普通なんですけど」と返した。

正直なところ、
最近パソコンで打っていて
自分のタイピングが
思ったより遅いと気づいた。
特に「p」と長音「ー」が打ちにくい。
指のホームポジションは
大体わかるけど正確には決まっていない。
ブラインドタイピングはできる。
でも速くはない。

面接では
ブラインドタイピングができると答えた。
コピペのショートカットと
半角カタカナの変換方法も聞かれた。
全部正解した。
ここだけはスムーズだった。

2月31日。

前職の就業期間を聞かれて
「2026年の2月31日まで」と答えた。

2月31日は存在しない。

言った瞬間に気づいた。
面接官は
「2月までの3ヶ月間ということですね」
と流してくれた。
触れなかった。
こちらも訂正しなかった。

存在しない日付をひとつ、
面接の記録に残した。

弱みは正直に
答えすぎた。

最後の質問。
長所と直したいところ。

長所は「好奇心が強いところ」。
すぐ出た。

直したいところは「継続力」。

面接官が聞いてきた。
「あまり長続きしなかったり
しますか」と。

否定すればよかったのかもしれない。
でも正直に答えた。

「長続きはするんですけど、
途中で途切れ途切れになって。
モチベーションが
一時下がる時期があって、
また盛り返しはできるんですけど」

言い終わってから気づいた。
直前に
「3ヶ月で前職を辞めた」と言っている。
その直後に
「継続力がない」と言っている。
面接官の中で
完全に裏付けが取れてしまっている。

好奇心が強くて、
継続力がなくて、
3ヶ月で辞める。
これは面接において
最悪の整合性だと思う。

KEY INSIGHT

弱みを正直に言ったのが
悪いんじゃない。
3ヶ月で辞めた事実と
「継続力がない」という自己申告が、
面接官の頭の中で
ひとつの線になった。
嘘をつくべきだったのか。
分からない。
でも整合性だけは最悪だった。

面接が終わった。

「私からの質問は以上となります」

30分。体感も30分だった。

面接後にアンケートが届くらしい。
書類を当日中に入力する必要がある。

「ありがとうございました」
「失礼します」で電話が切れた。

振り返り。

嘘は2つついた。
退職理由と短期希望の理由。
どちらも本当のことを言えなかった。

正直に答えすぎたのが1つ。
弱みの継続力。
3ヶ月退職の直後にこれを言う意味を
考えるべきだった。

存在しない日付を1つ言った。
2月31日。

存在しないシフトを1つ言った。

パソコンのタイピングは
「普通」と答えた。
嘘ではないが自信があるわけでもない。


面接官はコールセンターの人だった。
丁寧でゆっくりで、
最初は心がこもっていなかった。
後半はマシになった。

たぶんあの人も
毎日何人も面接していて、
最初の説明パートは
読み上げているだけなんだと思う。

受かるかどうかは分からない。
採用の場合だけ電話が来る。
来なければ
この30分は何も残らない。

ただ、この記事が残る。

この記事のスペックシート。

書いている人25歳 / 無職 / 月収0円
テーマコールセンター電話面接の全記録
面接形式電話面接(約30分)
応募職種コールセンター(受電)
時給¥1,200(研修中同額)
研修平日14日間(座学+ロープレ)
勤務希望週4日 / 日勤 / 短期
退職理由(面接)上司と合わなかった
退職理由(本当)退屈だった。誰も何も教えてくれなかった
弱み(面接)継続力
弱み(本当)継続力(同じ)
嘘の数2
存在しない日付2月31日
存在しないシフト1つ
結果通知採用者のみ
面接官の印象コールセンターの人。最初は心がこもっていなかった。後半マシになった

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